
7月5日(土)からelementsの展覧会、「03 CLIMATE PartⅡ- 風景のはじまり -」が開催されます。こちらはelementsのメンバーへのインタビュー、第二部で、CLIMATEについて深堀りした内容となっております。
graf時代の話やelementsの考え方などを聞くことができた、インタビュー第一部もぜひ御覧ください。
▶elements インタビュー01:elementsのはじまりについて
elements:井上真彦(建築家)・置田陽介(アートディレクター)・横山道雄(グラフィックデザイナー)
聞き手:graf 寺田・信川・松井
それぞれが思う、「CLIMATE」というテーマ
信川「続いて、CLIMATEの展示についてお伺いできたらと思います。どうしてCLIMATEというテーマにしたのか、どういった展示なのかをお聞かせください。」
井上「人の始まりとしてのFIRE、ものづくりの始まりとしてのSTACK AND BINDの次にやることとして、地球上の地域によって人間のありかたが少しずつ変わっていく面白さが見られたらいいんじゃないかな、っていうのがあって。それを一番定義づけていたり差異を作ってるのが気候なんじゃないかっていう。」
置田「僕は結構旅が好きで、世界中色々行ってて、何が楽しいのかなって考えると、その国に行ったらファッションも違うし、人の性格も違うし、食べ物も違うし、その違いが結構面白いなと思ってて。
例えば怠けやすい人たちとか、すごい勤勉な人達っていうのも、気候とか風土によって、順応するっていうのがあったと思うね。めっちゃ暑いからちょっと怠けようとか。とりあえず食べ物がいっぱいあるからゆったりした性格になるとか。逆に寒い国みたいなすごいサバイバルしないといけない状況だったらまた違うとか。結局気候に行き着くなって思ったところがあって。かなり大きなテーマやけど、トライしてみたいなと思った理由。
elementsって、FIREもSTACK AND BINDもCLIMATEも、プロダクトになったり、販売できるものができてるかって言ったら、そんなに大したものは今のところないかもしれないけど、自分たちの知恵にはすごい蓄積していってて、それもすごく重要に僕は捉えてて。
例えば火を起こせるようになるとか、扱いやすく、扱えるようになるとかっていう、自分の知恵に落としていくっていうところ。それだけでもまあ、いいのかなと思ったりもするぐらい。
なんかアナの解釈とちょっと違うな、違うっていうか、一緒やけどすごく綺麗にまとめはるなと思った。笑 多分でもそこが癖なんやな。だから1つのテーマやけど3人の癖が展覧会のバリエーションにはなってんのかなと。なんかいいバランスやと思う。」
信川「なるほど、、!置田さんから今回のテーマはCLIMATEでいこう。って提案があった時に、横山さんと井上さんはどう解釈して、展覧会に向けてどう動いていこう、みたいに考えたのかも気になります。」

横山「テーマを決める時って、FIREの時からそうですけど、いくつかの候補をみんなで考えるんですよ。でもなかなか適当な物って見つからないから、カリブさんが最終的にひとつの案を言ってくれるんですけど、今回は3回目なので、elementsでやりたいことっていうのはそれぞれなんとなく、既にあるような気もしてて。テーマがCLIMATEだったらelementsとしてどう動こうっていうのが割とあるように思います。
CLIMATEに決まった時、僕はもう徳島にUターンをしていました。カリブさんも淡路島に移ってたと思うんですけど、それぞれ拠点が分かれた時にこのテーマが決まり、僕の場合は大阪よりすごく山の中へ移動したわけですけど、気候とか風土っていうテーマに対してすごく直感的に動ける場所だったと思います。
既に徳島県内の傾斜地のリサーチをしていたので、そこに直結した感じもありました。自分の生まれた土地に20年ぶりに帰って、改めて面白いなと感じて。小さい頃遊んだ場所とか見ていた場所が、実は面白いものだと気付き、徳島県内で集落の撮影をしながら回ってる友達と一緒に、色んなところを回っていました。傾斜地で過ごすこととか、雨に対処して土砂が崩れないようにするとか、集落の知恵を聞くようになって、取材をしながら興味を持ちはじめたタイミングでもありました。
だからCLIMATEってテーマに決まった時にすぐにイメージできたし、自分が暮らしている環境の中でリサーチするっていうのが一番いいなと思いました。」

井上「CLIMATEって今でも結構難しいテーマだなあって感じていて、第1回第2回に比べるとテーマが広いので、まだまだ悩んでるところではあるんですけども。
僕は大阪の北摂の方に住まいがあるんですね。結構地方だと特徴的な気候っていうのが残っていて分かりやすさがあったりすると思うんですけども、大阪のそういうちょっと郊外みたいなところの、もうあんまり特徴的な気候っていうものを意識しなくなっちゃってるような場所で、気候っていうのを考えながら町を見た時に、どういうものが発見できるんだろうかっていう、そういうことをちょっと考えてみたいなっていうのがあって。
あえてちょっと分かりにくいところではあるんですけれども、気候っていうテーマで潜って考えてみたいなっていうのがあって、気候の欠片みたいなのがなんかあったりしないかなっていうのを歩き回って探って。で、1回目の展示で池のリサーチみたいなものを、過去の風景とかも思いを馳せながら集めてみたっていうことをやってみたんです。」
信川「私たちも大阪に住んでるので、リアリティがありますね。自分たちに近い日常の中のリサーチというか。なんかそれがすごく面白いなと思いました。」
井上「どうしても俯瞰的にものを見ちゃう癖があるので、そういうリアリティみたいなところに、あえてちょっとチャレンジしてみたいなっていうので、やってるっていう感じですね。
前回は池だけを切り取っていたんですけども、もう少し言語化して、こういう視点でも風土というか見方があることを伝えたいですし、今自邸の設計もしているので、そこにどういう反映をしているのかっていうのも展示したいですね。」

信川「置田さんは初めから乾燥とかが浮かんでいて、CLIMATEにしたんですか?」
置田「いや、さっき言ってたことを辿っていくとCLIMATEやな、ってことでテーマにしたんやけど、いざテーマにしたらめっちゃ難しいなって思って。笑 前回は保存の知恵っていうのをやって、それは気候に対応して色々あると思うんやけど、その中で乾燥させたら思いもよらない形になるのも面白いなと思って、乾燥に寄せた内容にしたんよね。そこから深堀りしたいなと思ったんやけど、日本って砂漠もないし全然乾燥していないし、夏とか湿度が高いし、だから乾燥してる場所に行こう!って思ったんよね。
横ちんもアナも住んでる所をリサーチしてるけど、僕はelementsって壮大なイメージがあるから、もうちょっと違うところのリサーチもした方がいいかなっていうのもあって、乾燥しているところと言えば砂漠ってことで、モロッコと、あとアフリカのベナンに旅をしに行ってきたのよ。ベナンは雨季と乾季があるんだけど、僕が行った1月はほぼ全く雨の降らない乾季でした。そういった気候の影響で土も赤色で痩せていて、野菜とかもあまり出来ないし大きな木もあんまり生えないから、家も木を使わずにその赤土を使って作る。

モロッコはまたベナンとはまた違ってもっと乾燥していて、そこで見てきた知恵とか景色とか建物とか、自分なりにいくつか持って帰ってこれたので、そういった展示と、そこから自分のものにした展示をやりたいな、って思ってる。」
横山「でもほんと難しいですよね。これまで火とか束ねるとか、割と分かりやすかった。気候と風土ってどこを取るかっていうところから始めないといけない。」
置田「何かプロダクト化できたとして、それがCLIMATEのテーマでできたものです、っていう説得力を持たせることが難しくて。難解なテーマを選んでしまったなって。笑」
横山「だから3回に刻んで展覧会をさせてもらえるってありがたいなって。」

信川「今までのテーマでは刻んで展覧会を開催してたわけではなく、リサーチと商品と一緒に展示してたんですか?」
横山「事後にも派生していった形なんですよ。」
置田「STACK AND BINDは結構派生したんですよ。一回目の展示をした後に、考え方が色々と派生して、3人でSTACK AND BINDの文通をしていくっていうのを2年位やってた。そこに面白みを感じていて。」
横山「STACK AND BINDの文通は今も続いています。あと、STACK AND BINDは本を作りたいと言ってくれる人が出てきたり。RONDADE(ロンダード)さんとかもそうなんですけど、気付きをもらった人が、何かできないかみたいな話もあったりと、そういうように発展することがあって。
次のテーマに移るためには、どこかでSTACK AND BINDというテーマを切りたかったのですが、派生しながら新しいアイデアも僕も出てきたりっていうのがあって、結構長かったと思います。」


RONDADEとリリースした書籍
間もなく開催される「03 CLIMATE PartⅡ- 風景のはじまり -」について
信川「今回のCLIMATE第二回の展覧会では、第三回のプロダクトアウトされた展覧会までの途中をお見せするような形かと思いますが、モックが見られるのかなど、情報を少し教えてもらえると嬉しいです。」
横山「僕はある程度形になっているものもあります。まだリサーチの段階のものもありますけど。これまでは斜面に対して、自分なりに問いかけをしていってて、色々なものに木を立てかけ、その角度を測って数字をスタンピングしたり、手元にある紙を折り曲げて、その角度を測ってみたりとか。実際に急傾斜地にも行って、そこで感じる40度がどれぐらいかとか、30度で作業するってどういうことかと、手元で視覚的に感じる傾斜と、身体で感じる傾斜を行き来する、そんな展示をしていて。
その中で、なぜその土地を選んで人が住んでいるんだろう、というのをちょっと紐解いていくと、例えば、日照時間が長い地域だと、斜面で暮らすというのは過酷なんですけど、日当たりがいいとか。斜面って結構崩れるのかなと思うんだけど、実は地崩れした跡の方が斜面が安定するため、1度崩れたところが定住しやすくなるという条件がある。昔の人はそういうのを知っていてそこに住む。一度崩れたところで割と水はけのいい、例えば石だったりとか、土のことだったりとか、代々、その土地に住みながら工夫してきたことを現在調査している段階。」

横山「テーマとしては、この土地で生きるために工夫されてきた何百年も昔からある「斜面」の活用について、僕は興味があるので、形にしていきたいと思ってます。
今ちょっと1個、形にまだしきれてないんですが、仮にHORIZONTALって呼んでるものがあって。こういう折り紙で作った山なりみたいな斜面があって、折り曲げてるものを展開すると、斜面に見えてた部分が水平線みたいに変わるという構造を実験的に作っています。レベルがゼロのところから何度角度を上げたら急傾斜になるかというのを見てきてたんですけど、それを実際手元で作って、形を作っていってる段階です。斜面の変化みたいなことと水平線地平線ということの関係性を、プロダクトとして落とし込めないかを考えています。
実際いくつかプロトタイプのような、手で触れるもの、実感してもらえるものを作って、今回並べられるのかなという段階です。まだ全然見えてないところもありますが。」



elementsのこれから
信川「ありがとうございます!では次に今後のことを聞いてもいいでしょうか。CLIMATEに限らず、elementsの活動のこれからについてお伺いしてもいいですか?」
置田「僕はね、テーマが窮屈に感じる時がたまにあって。テーマとの整合性を取らなあかんというのが。もちろんそういうプロジェクトやからそれでいいんだけど。そうじゃないテーマを外して3人で何かを作るというのもやりたいなと思ってます。」
横山「カリブさんは割とそういうことを言ってるような気がする。今まではテーマ縛りみたいなのがあるから、それに合わせていこうとしちゃうんですけど、単純に物作りをしたいというか。」
置田「STACK AND BINDで蓄積したものがあるから。やっぱりね、プロダクトの説得力ってあるやん。物の説得力というか。それも欲しいなといつも思ってる。」
横山「作るということだけに焦点を合わせるというのは、なかなかしてないから。前段階のテーマ作りみたいなことに時間かかったりとか。それがelementsの普段の活動やとは思うけど。作るということに力を注ぎきっていない気がする。」
松井「今日の話をいっぱい聞かせてもらって、カリブとか特にやけど昔から全然変わってないなという印象がすごいある。grafに来た時から、パーマネントカルチャーの話をしてたり、5階のベランダで家庭菜園とか、そういうのやってたやん。今淡路島に引っ越して実際家の裏でもそういうことしてるやんか。だから言ってることとやってること、めちゃくちゃリンクしてんねんけど、頭の中で整理しきれてない感じがあるのを、井上君と横ちんが俯瞰しながらサポートしてる感じがめっちゃある。だから、3人のバランスいいなってめっちゃ思うねん。」
インタビューは以上です。elementsのはじまりから、これからまで。たっぷりとお話しをお伺いしました。7月5日(土)からスタートする展覧会もぜひ楽しみにしていてください。
■03 CLIMATE PartⅡ- 風景のはじまり –
開催期間|2025年7月5日(土)- 7月13日(日)
定休日|7月7日(月)
時間|11:30−18:00
場所|graf porch(大阪市北区中之島4-1-9 graf studio 2F)
問合せ|06-6459-2100(担当:寺田・信川)