News
/

elements インタビュー01:elementsのはじまりについて


7月5日(土)からelementsの展覧会、「03 CLIMATE PartⅡ- 風景のはじまり -」が開催されます。elementsの3名は元grafメンバーということで、grafに居た当時の話からelementsのはじまり、今回のCLIMATEの展覧会についてをインタビューしました。

elements:井上真彦(建築家)・置田陽介(アートディレクター)・横山道雄(グラフィックデザイナー)
聞き手:graf 寺田・信川・松井

grafで働いていた時のこと

信川「graf在籍中のことをまずはお伺いできますか?当時から3人で一緒に実験的なことをしていましたか?何かその時点でやろうとしていたことがあったんでしょうか?」

横山「なんだろう。よく話に上がってたのは、カリブさん(置田の愛称)が企画していたスタディー展やね。あのイベントがelementsのきっかけになるようなことだった気がする。」

置田「そうかもね。スタディーしたいことを自分たちで決めて、それを研究して、発表する。そういうイベントやったね。結構自主性を求められるような企画やったと思う。」

信川「それは社外に向けた企画っていうよりはgraf社内に向けてプレゼンだったり、ワークショップのようなものだったんですか?」

置田「確か商品開発に繋がればいいなっていう話やったと思う。当時カフェが1、2階やったのを、2階だけに集約して1階がフリースペースに変わった時期やって。そのスペースをどう使っていくかっていう課題があった時やった。当時僕がそのスペースでなんか色々企画をしてたんですよ。1つがそのスタディー展で、商品開発に将来的に繋がればいいなっていう考えでやってた。結局は商品化はできなかったんだけど。
そのスタディー展っていうのは、何か自分たちが興味があるテーマを、まずシートに、「何をやりたいか」「なぜそれをやりたいのか」書くところから始まって、予算立てもして、プロトタイプを作って展示するみたいなやつだった。」

横山「覚えてるのは1階のスペースにそれぞれが展示して、発表して、最終的には松井さんとかG6って言われてた上の人たちにプレゼンをして、商品開発できるか否かみたいな話までするっていうところまでがあったと思うんですけど。」

スタディ展の様子

信川「G6は、graf立ち上げメンバーの6人ですか?」

横山「そうそう。オフィシャルじゃないけど、そう呼んでた時期があった。笑 で、僕はそのスタディ展でモビールを作るんですけど、モビールを作りたかったんじゃなくて。モビールにいろんな木っ端とか破片をぶら下げて、それを壁面に影を投影した時に三角形の頂点の移動が全部記録できるなと思って。その影をスタンピングして記録してたんです。そういう自分の意思が外されたグラフィックができないかっていう、検証みたいなことを展示中にずっとしてましたね。それでできたドットのグラフィックを使ったプロダクト開発ができればと思ってました。」

寺田「今やっていることと、繋がってそうな感じがしますね!」

横山「確かに、手癖的なことは、grafにいる頃から変わってないかもしれない。この頃はなんか偶然性みたいな話をよくしてた時代で、作意的にならないとか、そういうことばっかり考えてた時代で。結構好きやから今も続いているのかもしれないですけど。」

スタディ展のアイディアメモ

井上「僕は、若干記憶が曖昧なんですけど、水滴を落とすインスタレーションみたいなやつと、湿度によって開いたり閉じたりするような、それもインスタレーションみたいなのを作った記憶がありますね。」

置田「アナ(井上の愛称)、結構当時からCLIMATE的なものを作ってたってこと?」

井上「そうですね。笑 その時はもうドンピシャでそうでしたね。」

置田「あの当時は色々してたよね。『Touch the Sun!』っていう太陽展みたいなのもやってたよね。アナはよく日が昇ったときに屋上で観測してたよね。屋上にピンホールカメラを設置して太陽の動きを青焼きにしてた気がする。2011年とかやから、記憶はうっすらやけど。」

太陽の動きの青焼き

寺田「瀬戸芸も丁度それくらいの時期ですか?みなさんもいらっしゃいますよね。」

井上「僕はまだいましたね。」

置田「僕はいないんですよ。小豆島のカタチラボとか、淡路島はたらくカタチ研究島とかもあったね。あの辺もやっぱり今に繋がってるかもしれないね。フィールドリサーチしたり、graf全体がそういう方向だった。もちろんクラアントワークもがっつりしてたけど、僕も横ちん(横山の愛称)もアナもそういう活動が好きやったんやな。」

elementsのはじまり

置田「僕は元々gmっていうギャラリー部門に入っていたんですね。グラフィック畑ではあったんだけど、展覧会をしたり、イベントをしたり、そっちにすごく惹かれるものがあって。gmがgrafから抜けて、僕はグラフィック部門に入らせてもらったんだけど、元々企画をしていたこともあり、そのままイベント的なことも色々企画し続けたのだと思う。でも3人で在籍中に一緒に何かやろうっていう、elementsみたいなことをしようみたいな話は全然なかったよね。辞めてからよね。僕が独立してしばらく経った頃、2人とも独立していって、それでクラアントワーク以外の事したいなあっていうのがあって。
それでelementsみたいなコンセプトを思いついて、今までの知恵だったりとか現象だったりとか、地球のいろんなことを伝えるのに、デザインを使うっていうことがやりたいなと思って。アナと横ちん的にはelementsってどういう活動って捉えてる?」

置田が作ったelementsの資料


横山「2014年にカリブさんの事務所にアナと一緒に集められたんですよ。で、カリブさんがelementsの資料を作ってきてたんですけど、宇宙、人類、地球、物質とか素材とかイメージ写真がバーっと流れてて。自分たちが知らなかったり、理解できてない世界とか、まだ探る余地あるよなみたいな話をしてて。僕らはクライアントワークでデザインとかをやるんだけど、それ以前に、そこに行き着いたもうちょっと本質的なところを自分たちで探ろうっていう話がその時にあって。そこら辺は3人とも共通認識を持っていたタイミングでもあって。
その時にFIREとかSTACK AND BINDみたいなテーマがあったわけではないし、展覧会をしようっていう話もまだなかった。そういうのはまだないけど、何かしら作ろう!とかそれくらいの話で始まったような認識です。」

置田「結構なんかロマンチックな話やんね。」

横山「どこに焦点当てるかみたいな話がそれ以降にあって、1個ずつやっていっているって感じだと思います。」

井上「実は最初はSTACK AND BINDだったんですよね。でも1回目がSTACK AND BINDだと分かりにくいんじゃないかという話になり、もう少しストレートにってFIREになったと思います。」

初めのテーマになったFIRE。SWEDISH TORCHに着目。

置田「多分、結んだり束ねたりするっていう原始的な行為が、物作りの入口みたいなところやから、そこやろうっていう話になったんかな。けど、elementsっていう言葉に対していきなりSTACK AND BINDだと分かりにくい。ってなったんだよね。」

横山「積むと束ねるは結構人が立ち上がって知恵を持ち始めてるから、FIREでもうちょっと手前のことをテーマに、というような話をした気がする。」

井上「カリブさんに集められた時に「THE WORLD I SEE」っていうテーマが付いてて。今も副題みたいにロゴに付いていますけど。それが全部語っているなっていう感じがしましたね。」

置田「僕が思ったのは、どうやって自分たちや人間が成り立ってるのかを知らないでみんな暮らしてて、なんか漫然と生きてるけど、もうちょっと自分でその世界を見るっていう、能動的な行為をした方が、なんか豊かやなと思ってて。だから「I SEE」って自分から見るってことを掲げた。」

横山「でもここからFIREに決まって展覧会をするのはもう少し先になるんよね。招集は2014年で、展覧会は2年後の2016年11月頃だったかな。」

FIREをテーマに山に入ったときの様子

置田「その間に一緒に山に入って何かを焼いてみたりしてた。粘土っぽい土を拾ってきて焼いてみたら固まって、これって縄文土器みたいなことなんかな、とか。もうちょっと温度を上げる知恵みたいなのを探ってみたりとかしてたね。」

横山「山には2、3回入ってたかもしれないですね。一晩過ごしたりとか。FIREって、火をどうやって起こすのかみたいなところから考えてたから、結構時間を掛けていたような気もしますね。」

置田「展覧会では2組のゲストにも参加してもらってて、実は松井さんにも入ってもらってるんですよね。松井さんともう一人は料理人の方で、生ものを焼くっていうのは要素として外せないなと思って。」

松井が展覧会で発表したオイルランプ

松井「俺は火を明かりと捉えて、オイルランプを作った。火を持って歩くこととか、火を使いこなす、コントロールするということを考えた。展覧会に向けて自分なりに火について調べたけど、elementsって根源を探ることから始まってるのが面白いと思うね。まず自分でやってみて、可能性を探るっていうことが、やっぱり面白いプロセスやなと思うね。
油で火を灯していたのが、蛍光灯が生まれ、蛍光灯から次はLEDになってっていうランプには大きな転換が3回あった。それの原点に1回立ち返ってみるっていうことをしたかった。
震災の時にサバイバル能力とか、色々考えてみたりして、それであのプロダクトができたんよね。真鍮の三角のパーツだけなんやけど。自分の持ってる小皿と、油と、紐でランプ作るっていうかなりミニマルなデザインになってる。商品化できそうやけど、これもしてない。」

置田「火を扱う商品ってなかなか売るの難しいんですよね。家で使うのは怖いと思うみたいで。でもなんか、elementsをやってる僕みたいな人の考え方からしたら、火も扱えへんくなったら、もう人間終わり。笑 他の動物と分けてる所のかなり重要なとこやと思うね。火を扱えるって。」


インタビューは二部構成となっており、一部はここまで。elementsの3人の興味の方向性や考え方などが詰まった話を聞くことができました。
二部では今回の展覧会、CLIMATEについて色々と話しを聞いております。ぜひそちらも御覧ください。

▶elements インタビュー02:展覧会「CLIMATE」に迫る

■03 CLIMATE PartⅡ- 風景のはじまり –
開催期間|2025年7月5日(土)- 7月13日(日)
定休日|7月7日(月)
時間|11:30−18:00
場所|graf porch(大阪市北区中之島4-1-9 graf studio 2F)
問合せ|06-6459-2100(担当:寺田・信川)