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Bizarre Plants Showcaseインタビュー

珍しくて不思議な植物の世界を紹介する出版社”STRAGHT“。
アートディレクターと編集の2人組で構成される彼らの植物図鑑は、ただの難しい図鑑とは違い、
植物マニアから一般層の方にまで幅広く楽しんでいただける内容です。また本の出版だけに留まらず、その不思議な植物の世界観を多くの人に伝える為に定期的にイベントを開催するなど、精力的に活動をされています。
そして2016年8月19日(金)多くのファンが待望していた新刊”HOHENBELGIA -Serrate Tanks- / ATSUSHI SATO”の発売が決定いたしました。
その発売を記念して今回、編集を担当している川端正吾さんのインタビューをお届けします。
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まだご存じない方へ自己紹介も兼ねて、ストレイトさんの立上げにいたる経緯や想いを聞かせてください。
川端正吾(以下 川端): 植物の本を作る時、もちろん、園芸家さんにたくさんお話をきくんですけど、その話ぶりがホントに情熱的なんですよ。対象の植物が好きすぎて、その魅力を伝えたくて伝えたくて伝えたくて、まだまだ伝えたくて、って感じで、もう自分が今話してる言葉を、思いが追い越しちゃって、途中で何のこと話してるのかわからなくなっちゃうくらい(笑)。そんな熱を帯びた話も、図鑑になるとどうしても平坦な言い回しの解説文になってしまうので、もったいないなぁ、という思いがあって。著者の園芸家の人の思いの熱量をそのまま伝えられるような図鑑があったら面白いな、と思い、植物の解説などをインタビュー形式にした「読む図鑑シリーズ」を作ろう! と、昔から雑誌などで一緒に仕事をしてきたデザイナーの小宮山とストレイトを始めました。

1冊目「UNDERGROUNDS -CAPE BULB BOOK-」のテーマを”南アフリカの球根系の植物”にされて出版されましたが、テーマを選んだ理由と、その反響はどうでしたか?
川端: 南アフリカ産の小型球根たちは、葉が巻いたり、ねじれたり、縮れたり、とてもユニークな姿のものが多くて、魅力的な植物群なんです。でも、ケープバルブの多くは、成長期を終えて葉を枯らしてから、花が咲きます。だから、このユニークな葉と花が共存している状態というのがほとんどないんです。図鑑は、どうしても花のほうを重視しますから、写真として掲載されるのは大半が開花期の写真で、葉は枯れたみすぼらしい状態でしか写ってないんですよ。だから、あの摩訶不思議な葉の姿を主役に据えた本を作りたい、ということで第一弾となったんです。スピーシーズナーサリーの藤川史雄さんは、そのケープバルブの葉の不思議さに、もうずいぶん昔から気がついていて、屈指のコレクションを持っていたので、ひたすら通って撮影させてもらいました。葉を主役にしましたが、やっぱりなるべく花も撮影したかったので、開花期にもまた通ったりして、結局2年くらいかけて撮影しましたね。藤川さんは昔から植物のことを教えてもらっている僕らにとっての先生みたいな存在なので、第一弾は藤川さんと作りたい、というのもありました。小宮山なんて学生時代から藤川さんの店に通ってましたし。


BRUTUSの珍奇植物特集にも関わっている川端さんですが、噂によるとBRUTUSでの珍奇植物特集(※)もかなり好評だったと伺いました。一般的にも”珍奇植物”が広く認知されているという実感がでてきたのではないでしょうか?
※2015年9月1日発売号と2016年4月1日発売号

川端: 趣味色の濃い内容でしたから、かなり内心ハラハラしながら作っていたんですけど、出てみたらとても良い反響をいただいて。まさか、すぐ半年後に第二弾を! なんて話になるとは思ってもみませんでした。もともと多肉植物などはかなり盛り上がってましたし、ちょうど”変わった植物をもっと楽しみたい!”という植物好きの人たちの思いとうまくタイミングがあって、手にとってもらえたんだと思います。

g: ファン待望の新刊「HOHENBERGIA -Serrate Tanks-」ですが前回のキャッチーさと比べてかなりマニアックなテーマだったと思います。恐らくタンクブロメリアですらまだまだ一般的には知られていないジャンルだと思うのですが、ピンポイントでホヘンベルギアを選んだ理由をお聞かせください。
川端: タンクブロメリアの中でも、ホヘンベルギアは、重量感ある壺形になるので、多肉植物を好きな人にはたまらない姿になるんです。あと、育て方によって、かなり姿が変わってくるのも、多肉植物栽培をしてる人なら腕が鳴りますし。しっかり日にあてて、葉焼けするかしないかのギリギリの厳しさで締めて作る楽しさがあるので。ビシッと壷型に育った時のカッコよさといったら、もうこの上ないですよ。僕自身も一番好きな植物です。でも、ホヘンベルギアは、花がとても地味なので海外ではそれほど人気もなくて。やっぱり花が綺麗な種が人気ですから。もっとよく知りたいと思っても、ホヘンベルギアについて詳しく書いてる本がほとんどなかったので、その全貌がわかる本を作りたいな、と。そこで、世界中のブロメリアの文献のほとんどすべてに目を通している文献派の園芸家である佐藤 淳さんに、ホヘンベルギア属の中でも壺形になる種の多い、ホヘンベルギア亜属の全種解説をお願いしました。海外にも専門書がないので、世界中のハーバリウムからそれぞれの種のプロトローグやホロタイプ画像を取り寄せるところからはじまり、コツコツと資料を積み重ね、その全貌を明らかにしてくれました。おそらく世界で初めてホヘンベルギアを専門に扱った本だと思います。佐藤さんは、膨大なデータを精緻に読み解いていく方で、話し方もまるで図鑑を読み聞かせしてもらっているような感じで、理路整然と話すんですよね。だから、「HOHENBERGIA -Serrate Tanks-」はカッチリとした図鑑然とした解説になっています。すべての情報に根拠となる文献データも入っていて、「UNDERGROUNDS -CAPE BULB BOOK-」とはまた違った仕上がりです。こんな感じで著者の人の個性によって、毎回まったく違う雰囲気になる図鑑シリーズになったらいいな、と。藤川さんには今回も、素晴らしいホヘンベルギアのコレクションを披露してもらったり、レオポルド-ホルスティの謎に迫る特別対談に参加してもらったりと、いろいろ協力していただきました。

今後出版予定の図鑑の紹介や活動を教えてください。
川端: 今は、プラントハンターの長谷圭祐さんと、熱帯の雲霧林に生息するミストラバーたちを紹介する本を作っています。これもずいぶん発売時期が伸びてしまってホントに申し訳ないのですが…。図鑑写真はもちろん、彼が巡ってきた自生地の写真もふんだんに使った本になる予定なので楽しみにしていてください。

ありがとうございました!

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待望の新刊”HOHENBELGIA -Serrate Tanks- / ATSUSHI SATO”は8月19日(金)よりgrafの店頭、またはonline shopからご購入いただけます。興味のある方は以下のURLをご確認ください。

イベント情報
http://www.graf-d3.com/events/entry/hohenbelgia%20

online shop
“STRAIGHT#02 HOHENBERGIA -Serrate Tanks- / ATSUSHI SATO”
※別ウィンドウが開きます。
 

Straight
川端正吾

マガジンハウスの雑誌「relax」などを経てフリーランス編集者に。Straightでは企画編集を担当。
小宮山英明
グラフィックユニットTGB desigh.を立ち上げ、現在雑誌「MilK JAPON」「mark」のアートディレクターなどを務める。Straightでもアートディレクション全般を担当。
www.straight-books.com