


服部:今回は、公開ミーティング第一弾ということで。
武内:そうですね。自己紹介もかねてこの本の話から。われわれシアタープロダクツが5周年ということで出版された「シアタープロダクツのメソッド(*図右)」です。これまでの活動をまとめたものですが、今迄お世話になった方々に、また更にお世話になって、モデルをお願いして撮りおろした写真がこちらです。この中に服部さんも写ってます。
服部:そうなんですよ、いろいろポーズして。モデルのKIKIちゃんと同じステージに立っているという…!まあ、そんな話はいいとして。何から喋ろうか。
武内:知らない人もいるかもしれないので、自分たちの説明からしようかと思います。シアタープロダクツは、東京で活動しているファッションブランドで、いまだいたい6年が経過したところです。活動の基本は東京コレクションの一環で行うファッションショーで新作発表するということで、基本的には普通のアパレルメイカーを目指してるし、そのつもりなんですけど。
服部:違うと思うなっ!
武内:…目指してるんですけど、あの、割と浮いているんですね。もう自覚するくらい浮いている。それというのも、この会社は、私ともう一人デザイナーの中西と、プロデューサーとかプレス的なことを中心にやっている金森と、3人で始めたんですが、この3人とも、アパレル業界のことをあまりに知らなかった。知らないのにスタートしたために、やることなすことが何かちょっとおかしい。あまりのズレに周りの方々から注目して頂けたという、結果オーライな6年間を過ごしてしまった。
服部:正直な話ですよね、それ。グラフもその辺はよく似ているかもしれません。6人で始めたんですが、業界のことをわかっていたかというと、そうでもなくて。関わってくださった職人さん達に業界のことを教わりながらも、セオリーでないことをまずやってしまうじゃないですか。失敗して、それが身にしみて次の経験になっていった。グラフはデコラティブモードナンバースリーという会社名なんですが、最初は3名、大工の野沢とプロダクトデザイナーの松井と僕で始まったんですよ。それから、のちに3名加わって、やっとユニットとして仕事が始まった。2008年で10年目になるんですが、やっと10年っていうか…、早かったんですけどね。2000年に、もともと僕らがいた小さい南堀江のショウルームから、中之島に引越してきたんです。大工や、家具職人、シェフ、デザイナーがいて、それぞれが持ったスキルをそれぞれのフロアで表現できたのがここに来てからです。丁度その頃シアタープロダクツと出会いました。
武内:その頃はシアタープロダクツができて本当に間もなくて、会社も作りながら、発表にむけて準備していた時期でした。大阪でも発表したいと思っていた折、誰かにグラフのことを聞いたんです。それで、絶対そこへ行ってみたい、お願いするしかない!という話をして、実際、いきおいでここへ来たんですが、でも、あんまりに始めてすぐだったので、服なんか一枚もなかった。
服部:なんかそれ、プレゼンとしてすごいね。服一枚もなくて。それを受入れたグラフもグラフだけど。
武内/服部:(大笑い。)
武内:OKを貰ったときも、あ、これでOKなんだって、驚いた。とにかくそのくらい始めの頃からここへ来ているので、もう全てをみられているような、そんな気がします。
服部:それはお互い様だと思いますよ。僕らも、ギャラリーの運営もよくわからないでいた頃に、楽しい人に出会えたと思う。ただぽんとスペースだけあって、なんのフォーマットもなくて、みんながそれをおもしろおかしくしてくれた。
武内:はっ。フォーマットがなかったから入れたわけですね。
服部:それもあるかもしれないけど!…今もフォーマットがあるわけではないですが。―いやしかし、あれは刺激的だった。一発目の展覧会がすごかったんですよ。その頃「ニードルパンチ」っていうのやっててね。
武内:そう、もともとカーペットとかフェルトを作る方法なんですけど、それを使った加工で、「はがす服」というのを作りました。
服部:白い生地にTシャツがばさーとくっついてるんですよね。(*図右)
武内:これ、Tシャツが繊維と絡み合った状態で、1枚の布状のシートになっているのを買う方が、自分で好きな場所から一枚ひきはがして手に入れることができるという、ニードルパンチの服です。
服部:僕も、そのときめちゃめちゃはがさしてもらって、よく着てるんですけど。
実はあの後、たまたま機会があって、同じ工場に行ったんです。それで、ニードルパンチのことも聞いた。実際当時はフェルトとか絨毯とかのでき方も知らなかったから、シアタープロダクツを通して教えてもらったような。
武内:あの工場に行ったんですか!ごわごわのうどん食べましたか?人の家にあがるみたいなところ!
服部:行った!行った! 行ったけど!その話はおいといてー
武内:は、そうですね、そう、会社おこす前から「ちぎる」とか「はがす」ということを商品にしたいというのは考えていて。でも方法がわからなかったんですが、あるときフェルトという"繊維をからませること"と、"ちぎること"は、うまくいくのではないかと気づいたときがありました。アパレル業界にいたので、ニードルパンチの手法は知っていたから、もうずっと人との出会いを待ち続けてました。そんな時、たまたまその工場の人に出会ったんです。スキンヘッドで、ファーのネクタイをしているおじさんで、すごい変な人で。おもわず話しかけてみたら、ニードルパンチをやってる人だった。その人と会わなかったら、あのような実験的なことをやれるはずがなかったと思う。
服部:そうだったんですね。その風貌でそこまでつっこむの勇気いったでしょうけど、よくいきましたね、すごいね。しかしその次の展覧会も凄かったよね。
グラフの5階に物置を置いて、それをショップに見立てて突然現れたんですよね。
武内:そのときはお店が移動するという移動型のショップをやってみたくて、コンパクトで運びやすくてどこにでもすぐ行けるように、物置を使いました。他の展覧会やっているのに、ビルの外のスペースに無理矢理置かせてもらった…。
服部:何が登場するんだろって思ったら、そのまんま物置。
武内:通販で買った。―その後もなんだかんだいって、年に1〜2回何かをやらせて頂いていてきました。定期的にきて服を売るので、「graf の生協」って言われました。

服部:シアター、もう7年目?
武内:今6年になって、7年目ですね。
服部/武内:はーー
服部:僕らもそうなんですが、シアタープロダクツも当初からのスタンスを変えずに続けているといっても実際変わっているはず。
武内:変わっているはず。変わっていないと困る。でも、最初に思ったこと、それはブランドコンセプトであり、シアタープロダクツという名前が持つ意味の一つでもあるんですけど、アパレルメイカーにまつわるすべてのこと、洋服、つまり商品であったり、営業だったり、接客だったり、取材であったり工場のやり取りであったり、そういったすべてを舞台にあげてみせていきたい、という思いは変わらずあります。そしてそれは少しずつやっていくしかない。
服部:確かにいままでの経過をたどっていくといろんなことがそれに反映されてるかもね。オフィスを見せた展覧会あったよね?
武内:あれは「シアタープロダクツの現場」っていうタイトルの展覧会で、東京のパルコミュージアムで開催したあと、そのドキュメンテイションという形で大阪(もちろんgraf)や福岡でも展示をしました。
会社を全部ミュージアムの中に引っ越して、それこそグラフさんにアトリエをつくって頂いたんですよ。本当にスタッフも毎日そこに出社をして、普通の仕事をそこでやり、それがすべて展示になる。これはまさに今話した会社のテーマをわかりやすくそのまま形にした展覧会でした。展示構成としては、まずチケットを買って入ると、何百枚というスカートが吊るされていて、分け入って行く。その「スカートの森」を抜ければ、そのオフィスがあった。(*図右)
服部:色んな人と出会ってると思うんだけど、シアタープロダクツは出会いの場をつくるのがすごいうまいなと思った。今話した展覧会もそうだけど、それごとパフォーマンスや、ワークショップのスペースにしたりとか。一番初めのニードルパンチもそうだけど、「はがす」という行為をお客さんにしてもらうのもコミュニケーションの一発目の手段。そういうことを意識しているんだろうなって思うんだけど、その辺どんな感じでやってるんですか?人が集まる場所ということを考えてる?
武内:意識して表現しているということはあまりないです。ただ出てくる物にそういう要素が含まれていることが多いし、それに対して、何か思うことも多い。確かにシアタープロダクツが目指していく方向はそこにあるんじゃないかいま、やりながら考えてます。
服部:一発目からのニードルパンチがあまりにコンセプチュアルすぎたというか、すべてのことを語っていたのかもしれないですよね。そうそう、シアタープロダクツってどんなコンセプトで始まったん?っていうのを聞きたかったんだけど、何年も聞いた事がなかったんですね、僕はこういうことは聞くまでもないやって思いながら、感じ取ろうとしてたんですけど、僕の解説聞いてもらっても良い?
「たぶん、シアタープロダクツ」という。たぶんですよ、日常が舞台と考える。日常を舞台と考えるときに家のドアを開けてぱーんと飛び出たら、そこはすべてステージになっていて、日常自体を常に楽しく生きるためのツールとして服を「プロダクツ」という呼び方してたりするんだろうなって。それは毎日の日常を自分が変える、そして廻りも変わるということなんだろうなって思っていたんですけど。どうなんですかね?
武内:えーと、そうですね。簡単に答えられないですよね。そういう部分もあります。そして、その考え方はとても好きです。今1人名前を出そうと思った人が…名前が思い出せない…昔バラックとかの内装をやっていた、一応建築家なんですけど、建築家なのに全然家を建てない人。あ、そうそう今和次郎さんって言う方が世の中は舞台だって話をしていて、建築やインテリアはすべて大道具・小道具だし、洋服やファッションは衣装だし、いる人間は全員登場人物だ、すべてが舞台だと。今和次郎さん大好きなんですが、その考え方はすばらしいと思う。自分たちも共感しています。
服部:名前自体はそこから来てるんじゃないの?
武内:そういう文脈の「シアター」と洋服の関係性というよりは、正面からほんと洋服に徹していこうと思ってるのです。そのものが持っている意味とか要素がとても「シアター」という現象と類似しているんです。
服部:服自体がメディアって言う感じ?
武内:うーん、そこをつっこむと大変難しい。
さっきの話でいうと、洋服のいろんな側面をみせていく会社というか組織といったものが、ちゃんと法人としてこの世界に現実に存在している状況が、とても劇場的だし不思議だということです。もちろん、一方で現実が劇場的だという要素も大事にしているつもりだから、凄く多面的です。

服部:グラフもものづくりの集団ですが、すべてを道具と考えようと。服も当然そうだと思うし。今やすべてこと足りてるじゃないですか。不便じゃない生活をしていて、そんな中でどういった道具が必要か。
例えば、「人が次の一歩を踏み出すためのモノ」っていわれたら「道具」というカテゴリーになると思うんだけど、そういうツールの正しい選択をしている人たちが、今の時代は、正しく生きることができたりするんじゃないだろうかって。出来ればそういう人の行動の一歩を踏み出せれるツールをつくれたらいいなと思っています。
そういう意味でいうと、シアタープロダクツとは、ずっと近いものがあるなって思っていた。
シアタープロダクツの服はちょっと装飾的だし、様式も帯びているし、グラフはまた正反対でミニマム、最小単位でつくるという方向だけど、考えているのは割と近いところなんじゃないか。
僕はよく日常と非日常の話をするんだけど。日常を更新するために非日常があって、非日常と出会った瞬間に新しい日常が生まれていく。ルーティンな日常が続いていくわけじゃなくて、常にステップアップした日常が続いけるんじゃないかって。例えばシアタープロダクツの服は、僕からすると非日常なんですよ。だけどこういった非日常が与えられるとすごくハッピーで、見てるだけで毎日楽しくて。全然正反対なものづくりなんだけど、どっちの方向にも非日常の種はあるんだなって今回改めて思いました。
武内:初めてここに来たとき、グラフは作ってるものは凄くシンプルなんですけど、そのときの体験した印象は凄いファンタジックだったんですよ。この間、グラフのスタッフの方と話したときに「シアタープロダクツはファンタジックな雰囲気があって、グラフは機能美を追及してて余計なものを排除している」ていう話があっただけど、僕は逆にグラフのほうがファンタジーの世界が広がっていると思った。不思議な国の幸せ村。こんな世界がこのビルの中にあったんだと。それはまさに非日常。シアタープロダクツから見るとグラフの方が非日常だった。それってデザインのシンプルさとか、そういう表面的ものじゃない。そういうところでお互い感じているんじゃないかと。ともかく、出会ったときの衝撃はほんとに素晴らしかった。
服部:ほんとに?あのときは凄く必死で、こんなに人数もいなかったし、このビルはなんとか運営していくのに必死こいてやってたから。事務所でみんな寝泊まりしていたし、お出迎えするには相当悪条件だったと思うんですよ、その当時。
武内:いや、ここを見たとき、こんな風になりたいって思っていましたよ。すごいしっかりして見えたし。これを目指そうって思ったぐらいです。
服部:よくいうわー!涙が出てくる。
武内:やはり自分達がやりたいことや、イメージ、事をちゃんと形にしていける会社があるということにとても意味を感じていて、そのことを大事にしていきたいと思っているので、そういう意味でグラフのこの集団が、会社としてちゃんと存在しているってことに、凄く勇気づけられます。
服部:僕らも会社というよりは、ものづくりの環境をどう豊かに保てるか、ってことだけしか、最初考えてなかったけれど、人が増えていく中で色んなコミュニケーションを考えていく必要がうまれたりもする。それは新たな課題だけれど、でもこれに打ち勝っていかないと。プロダクトデザイナーでも、ファッションデザイナーでも、グラフィックデザイナーでも、セオリーからはみ出たやり方で会社を組織しようとしてる人達もたくさんいた。僕らがやりだしたとき日本でこういうユニットってなかなかいなかったんですよ。東京だったら「エグジットメタルワークサプライ」っていって鉄を扱うアーティストの集団だったり、ロンドンだったら「トマト」とか、スウェーデンだったらス「スノークラッシュバルボモ」っていう人たちとかいたけど。その人達くらいで。だから、ここで倒れると色んな人達に迷惑かけるんじゃないかと思ったんです。こんなかたちで仕事をしていて会社として成り立っているというのが、やっぱりあかんかったんだ、て思われたら後について来ている若い人達とかどうなるんだろうと。だんだん使命感が湧いて来て、なんとしてもやり遂げるぞって。
武内:責任重大ですね。追い込んでいくタイプ?
服部:そうですね。Mかな。…。ま、いいや。

服部:ーで、今回この場所に何故こういう限定ショップというのが生まれてきたかを説明させて頂こうかな。まず、去年の11月にグラフビルが改装されまして、ここはティーサロンというスペースだったんですね。2階にも飲食スペースがあるんですが、ここは横にはグローサリーがあり、ティーサロンでは世界の茶葉を扱っていましたが、今回、ここをgrafのサロンとしてリニューアルさせました。
当初考えていたお茶の仕組みというものをもっと貪欲に発展させたいなと思ったんです。お茶で人をもてなすことで会話を向上させたりできる。口のすべりをよくしたりっていう効果がお茶には絶対あると思っていたし、そこで出会った人たちの関係が発展していくっていうのが理想で、ティーサロンをやっていたんですね。
こうやってシアタープロダクツとか、いろんなアーティストがグラフを訪れて、デザイナーも、アーティストも、ミュージシャンも色んな人たち。ここから何かが生まれていく場所となればいいなと思ってサロンを新たに始動させたわけです。―というわけで、第一回目、武内君、ありがとうございます。期間限定120日となっているんですけど、120日間で何しよっか?
グラフとシアタープロダクツで考えた何かプロダクトとか生まれて発信していけたらいいなと思ったりしているんだけど。モノだけでなく、よくワークショップもやってるじゃないですか?ワークショップも新しいプログラムのかたちとして開発していけたらいいな。
武内:ワークショップは好きです。
ここの企画の話が始まったときにまずイメージしたのは、本気でお店をやると面白いだろうなということでした。ただ、普通のお店を出しても仕方がないので、ショップの面白さをより分かりやすくして、ショップという事態をよりおかしくするために、どこかをデフォルメさせようと思いついたアイディアが「ラッピング」。ラッピングは普通にお店で行われることですが、その部分をデフォルメさせて注目することでちょっと変わったことになると。
服部:いろんなところからアイディアが出るね。今回本当にすごくて、まだ体験されていない方もいると思うけど。いろんな国からラッピングペーパーが到着してるんですね。
武内:結構楽しい。お店とかラッピングとか、そういうものにまつわるもので120日間のあいだ、何かできるといいですね。
服部:今一つだけ思いついたけど、それぞれ色々ラッピングの写真撮ってる?
武内:やってるんですよ。
服部:120日目でそれを集めた展覧会とかできるかも。発展させていきましょう。ゆっくり。
武内:そうだ、あと什器に感動したんですよ。グラフさんに作っていただいたシアタープロダクツ始まって以来のオリジナルのハンガーラック。初めてですよ。すごい嬉しくて。これも何回もやりとりして、僕も僕なりにデザインをつめて形になっていったんですけど、すごくグラフらしくて、すごくシアタープロダクツらしくて。シンプルさも保ちつつちゃんとできた気がしている。あ、そうだ、120日間のうちにこれがテーブルになったっていうのも作りたいな、て思いながらグラフについたんですが、上のトイレに行ったら手洗いのところがすごくそっくり。無意識にみてたのかな。…。笑
服部:そっか、テーブルつくろうよ。
武内:ほんとに良くできている。質感とか。
服部:色のバランスもすごくいいしね。ちょっと重いけど。
武内:重いほうがいい。
服部:これ次どこかもっていこうと思ってる?
武内:思ってます。いいですか?
服部:もちろん。
武内:焼印を押してもらえたら。
服部:シアターの焼印ってあるっけ?
武内:実はロゴの焼印がある。
服部:刻印式。
武内:ミーティングっぽくなってきましたね。
2007年12月9日 graf salon にて談
編集:工藤千愛子/金森香